一般の予防と要因 - Part Prevention -

首の予防と要因

頸椎の外傷はラクビー、アメフト、格闘技などのコリジョンスポーツの際に発生することが多く、症状が軽度のものから、重篤な麻痺を生ずるものまで様々な段階の障害が存在します。

バーナー症候群

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
ラクビー、アメフトなどのタックル、衝突などで頸椎が通常の可動域以上に曲がることにより、頸椎から出て、上肢を支配する神経が挟まれたり、引っ張られたりするために起こります。
どのような痛みが生じるか
頸椎から上肢にかけて放散痛を生じます。しびれや灼熱感を感じることもあります。
どのような治療をするか
通常は安静や痛み止めの内服などで症状が改善することが多いです。しかしながら、頸椎の脊柱管狭窄を有する患者さんは症状が長引き、再発を繰り返すことがあります。
しびれの増悪や、手指のしびれがとれない、力が入らないなどの症状がある場合は、スポーツ整形外科を受診し、MRIなどの検査を必要とする場合があります。
完治までのおおよその期間
数日から2週間位の期間で症状が改善することが多いです。

頸椎捻挫

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
ラクビー、アメフト、格闘技などのコリジョンスポーツ以外にも、後方からタックルを受けるサッカーなどでも起こることがあります。頸部を捻るような衝撃により受傷し、頸部から頭部、両肩にかけての強い疼痛、頸椎の運動制限が主な症状です。
スポーツによる頸椎の外傷というと一番多いのが頸椎捻挫です。当障害は筋肉、靭帯、関節などの軟部組織の損傷が原因と考えられています。頸椎捻挫の代表的な損傷形態は頸椎の過伸展損傷であり、交通事故で止まっている車に後方から追突されて頸椎が後ろに伸展する際に起こるむち打ち損傷と同様な形態をとります。
完治までのおおよその期間
数日から2週間くらいの期間で症状が改善することが多いです。

頸髄損傷

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
ラクビー、アメフト、水泳の飛び込み、格闘技、体操、スキーなど種類は様々です。
受傷形態の例を挙げると、ラクビー、アメフトはタックル、スクラムの際に頸椎が過屈曲して脱臼骨折が起こり、脊髄損傷が起きます。水泳の飛び込みは、プールの底に頭をぶつけて、頸椎が過伸展して脊髄が挟み込まれることにより脊髄損傷が起きます。スキー、体操などは頭から転落や転倒した際に起こります。
どのような痛みが生じるか
頸髄損傷には頸椎の脱臼や脱臼骨折を伴うことが多く、頑固な頸部痛により頸椎の運動制限が出ます。
重症頸髄損傷の場合、受傷後より上下肢の麻痺を生じ、横隔膜の麻痺により呼吸障害、自律神経の麻痺により低血圧や除脈を生じ、ショックといわれる状態になります。
どのような治療をするか
頸髄損傷には主にFrankel分類、ASIA分類の2種類があり、それぞれ麻痺が重い完全麻痺から、麻痺の軽い不全麻痺へ5段階の評価方法となっています。
不全麻痺の場合は脊髄機能が一部残った状態であり、残存機能のリハビリテーションにより症状が改善する可能性がありますが、最重症の完全麻痺には現在の医療をもってしても治療法はありません。また、頸髄損傷の際は頸髄の交感神経も同時に損傷されるため、損傷直後から体を維持する心臓、呼吸機能が低下するため早急な救急対応が必要となります。
競技の最中の外傷で頸髄損傷が疑われる際は、頸椎を動かさないようにしながら、救急車を依頼、場合によって人工呼吸などの救命処置を行う必要があります。治療は高度救急救命処置が必要となりますので高度医療ができる病院に搬送ということになります。
完治までのおおよその期間
リハビリテーションにより症状の若干の改善は見込めますが、麻痺は永続的であり、むしろ残存機能のリハビリテーションが中心となります。
現在の医療を持ってしても治療できない脊髄損傷に対しては、上記のようなスポーツに携わるすべての人が頸髄損傷の恐ろしさ、予防方法、対処方法を知っておくことが脊髄損傷を減らせる唯一の方法であると考えています。

肩の予防と要因

反復性肩関節脱臼

スポーツ中の外傷などで肩関節の脱臼が起こり、それが癖になって肩が外れやすくなってしまった状態です。
どのようなスポーツで起こりうる傷害か
野球やバレーボール、サッカーなど、どの様なスポーツでも起こり得ますが、ラグビー、アメフト、柔道などのコンタクトスポーツに多いと言われています。
どのような痛みが生じるか
脱臼を繰り返したり、スポーツや日常生活動作で外れそうな不安定感や疼痛を生じる場合があります。ひどくなると、寝返りでも外れてしまうこともあります。
どのような治療をするか
リハビリテーションなどを行っても改善が見られない場合は、完治させるために損傷した骨や靱帯を手術にて修復する必要があります。(鏡視下バンカート法)当院ではほぼ全例関節鏡視下手術を行っています。
完治までのおおよその期間
入院期間は3~5日と学校や仕事になるべく影響が出ないようにすることが可能です。術後は装具を3週間ほど装着して患肢を固定します。個人差はありますが、術後3ヶ月で軽いスポーツ、6ヶ月で大抵のスポーツ復帰が可能となります。ただし、ハイレベルのスポーツ活動で元のスポーツレベルまで復帰するには、筋力の回復に6ヶ月以上リハビリテーションを行う場合もあります。

腱板断裂

肩の痛みはいわゆる四十肩、五十肩などと診断され長く痛みが続いてしまっていることが多いのですが、その中には、腱板断裂などによる痛みで苦しんでいる方が多く含まれています。その場合、MRIなどで精査をして治療方針を決めていく必要があります。
どのようなスポーツで起こりうる傷害か
スポーツや日常生活時に転倒して手や肘をついて受傷したり、重いものを持ち上げようとして肩を捻ったりといった外傷を契機としたり、明らかな外傷がなく発症することもあります。
どのような痛みが生じるか
症状は肩の挙上困難等の運動障害、運動痛、夜間痛などを認めます。五十肩と違うのは、拘縮、すなわち肩関節の動きが固くなることが少ないことです。
どのような治療をするか
リハビリテーションや注射などを行っても改善が見られない場合は手術が必要になります。
当院ではほぼ全例関節鏡視下手術を行っています。疼痛対策も現在、ブロック(痛み止め)を持続注入し術後も安心して過ごせるよう工夫しております。また、リハビリテーションも充実しており、術後の機能回復にも安心して頂けるよう努めています。
完治までのおおよその期間
術後は装具を3週間ほど装着し患肢を固定します。入院期間は1~3週間程度とすることが可能です。個人差はありますが、術後2ヶ月で日常生活復帰、3ヶ月で軽作業、6ヶ月で重労働可能となりますが、術前の状態が不良な場合(関節が固まってしまっていたり、筋力が極端に落ちてしまっていたりする場合)は術後さらにリハビリテーションを必要とする可能性もあります。

肩鎖関節脱臼

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
スポーツ中の転倒やコンタクトスポーツ中に肩を強打し、肩甲骨と鎖骨をつないでいる肩鎖靱帯を損傷し脱臼した状態です。
どのような痛みが生じるか
肩の運動障害や、運動痛を認めます。
どのような治療をするか
脱臼の転位の程度により治療方針が異なります。転位が軽度の場合はリハビリテーションによる保存療法が中心となります。転位が重度な場合は手術療法が必要となります。当院では関節鏡を使用して、なるべく小皮切で再建を行う場合もあります。
完治までのおおよその期間
術後は個人差はありますが、術後3ヶ月で軽いスポーツ、6ヶ月で大抵のスポーツ復帰が可能となります。

肘の予防と要因

肘関節遊離体

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
主に野球、体操などで起こります。
どのような痛みが生じるか
遊離体が収まりの良いところにいれば症状がない場合もありますが、動き始めると肘が動く角度に制限(伸びない、曲がらない)や痛みが出たりします。
どのような治療をするか
成長期、特に小学生は完全に遊離して(はがれて)いなければ自然につくか、改善するか経過をみます。ただ、肘が動く角度に変化が出れば早期に手術も検討し、慎重に見極めます。
完治までのおおよその期間
手術の場合、関節鏡で行います。入院期間は3~5日と学校や仕事になるべく影響が出ないようにすることが可能です。術後は特に固定をしません。肘の角度にもよりますが、術後2ヶ月でスポーツ完全復帰を目指します。
遊離した骨と軟骨が大きい場合、骨軟骨移植を行っております。その場合、復帰は3~4ヶ月が目標となります。

テニス肘

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
テニスやゴルフなどのスポーツや日常生活時に手を使いすぎて起こります。
どのような痛みが生じるか
症状は手首を上に返した時、指を伸ばした時に痛みを感じます。特にテニスのバックハンドで痛みが出ることがあります。
どのような治療をするか
主にリハビリテーションや注射などを行って治療します。
完治までのおおよその期間
基本的には腱鞘炎と同じです。安静だけでも一時的に改善しますが、使い方の工夫もしていかないと再発してしまうので、ストレッチなどの予防も大事です。

野球肘

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
野球で起こり、痛みの部位によって内側型野球肘、外側型野球肘、後方型野球肘と分けることがあります。。
どのような痛みが生じるか
投球時に肘内側、外側、後方に起こります。小学生低学年から痛みが出やすいのは、内側型野球肘です。小学生後半、中学から痛みが出やすいのは、外側型野球肘で遊離体になることがあります。(離断性骨軟骨炎)
中学後半から高校生で後方型野球肘(肘頭骨端線離開、肘頭疲労骨折)になることが多いです。
どのような治療をするか
治療はリハビリテーション(運動療法)が中心で、肩の問題だけでなく、肩甲骨や胸郭、体幹、股関節などに問題がある場合があるため、肩肘に負担のかからない全身を使ったフォームを習得できるようなコンディショニング作りから始めます。
しかしながら、復帰を急ぐ場合は手術が必要になる場合もあります。
内側型野球肘に対しては高学年になれば靭帯再建術、外側型野球肘に対しては関節鏡手術や骨軟骨移植、外側型野球肘にはスクリュー固定など状況に応じて早期復帰を目指して行います。
完治までのおおよその期間
それぞれ状況に応じて復帰までの期間は大きく異なりますが、内側型野球肘は比較的早期に復帰することが多いです。
外側型野球肘、後方型野球肘は悪化すると長期に治療を要するので悪化する前に診断をつけることが大切です。完全に野球自体禁止することは少なく、ポジションや病態の状況に応じてバッティングや捕球練習など許可していきます。

腰の予防と要因

腰椎椎間板ヘルニア

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
アスリートに限らず一般に発生頻度は高く、スポーツ障害としてもすべての競技種目で起こりえます。
どのような痛みが生じるか
髄核といわれるクッション材が断裂した線維輪から飛び出た状態がヘルニアといわれ、腰痛のみならず、神経根を圧迫することにより臀部または下肢に痛み、しびれを生じます。
どのような治療をするか
ヘルニアの発生する部位、出っ張り方、大きさなどから予後は異なります。
疼痛の強い急性期は安静が第一でスポーツ活動を休止したうえで消炎鎮痛剤、プレガバリンなどの内服治療を開始します。痛みが持続する場合、神経根ブロックなどのブロック治療を考慮します。穿破型とよばれる靱帯を破って脱出したタイプのヘルニアは3~6ヶ月程度で自然吸収が見込まれます。
神経麻痺が出現している場合、ブロックなど保存療法の効果が無い場合、また長期間にわたり日常生活や、スポーツ活動に支障をきたし、早期の除痛を希望される場合には手術を検討します。最近は、低侵襲手術が広く行われるようになっていますが、当院ではさらなる低侵襲化を目指し、経皮的内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(PELD/PED)を取り入れました。
完治までのおおよその期間
手術が低侵襲であっても術後は、あまり早期にスポーツに復帰すると再発を起こす危険性が高まります。リハビリテーションで評価を受けたうえ、術後2縲鰀3ヶ月程度でのスポーツ復帰となります。

腰椎分離症

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
10代の発育期に、野球、サッカー、ボート、クラシックバレーなど腰椎の伸展、回旋を繰り返す運動により、椎弓(椎骨の後方部分)の一部に疲労骨折を起こす場合があります。成人の6%程度に分離があるといわれていますが、これは発育期の疲労骨折が癒合しなかったなれの果てともいえるでしょう。成人における無症状の分離は治療する必要はありませんが、骨折を起こしたての場合、きちんと治療することにより骨癒合が得られる確率が高まります。
どのような痛みが生じるか
分離症の腰痛は腰をそらすと痛みが出やすいのが特徴です。
骨癒合しやすい初期の分離(疲労骨折)は、レントゲンでの診断が困難で、MRIやCTがかかせません。また、MRIやCT所見から分離部位の骨癒合のし易さを判断します。
治療方法および完治までの目安
骨癒合が得られる可能性が高い場合は2~6ヶ月程度コルセットを装着しスポーツを休止します。その間、再発防止のためハムストリングなどのストレッチングを指導します。痛みは骨癒合が得られる前から消失する場合が大半で、治ったと勘違いし、この状態で治療を中断すると骨癒合しない場合も多いため、治癒したかどうかは、CTでの骨癒合の状態で判断します。
骨癒合の得られる可能性が低いタイプは痛みが落ち着くまで、一時的なスポーツ休止、リハビリテーションを行い、必要に応じて消炎鎮痛剤の内服で対応します。症状がつづく場合は分離部ブロックにより分離部に生じた滑膜炎による痛みを抑えます。痛みが落ち着けばトレーニングを開始します。
成長期の腰椎分離症(疲労骨折)は早期の診断・治療が非常に大切です。皆さんが考えている以上に腰椎の疲労骨折の頻度は高く、スポーツを行っているお子さんで腰痛が続く場合は、早期の受診をおすすめします。

腰痛症

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
一般の方でも腰痛を経験された方は沢山おられるかと思います。アスリートはスポーツ活動中に同じような動作の反復ストレスが腰椎周囲に加わるため、腰痛の発生頻度は高いといわれています。
どのような痛みが生じるか
椎間板、椎間関節、筋・筋膜など様々な腰椎の構成要素が痛みの原因となり得ますが、必ずしも痛みの発生源が画像診断で特定できるわけではありせん。しかし、まれに感染や腫瘍が原因のこともあり、長引く腰痛の場合は医療機関での診断が必要となります。
治療方法および完治までの目安
急性期には一時的なスポーツ休止、消炎鎮痛剤の内服を行います。
競技特性に応じ、腰椎のみならず、全身のバランス調整や疼痛の再発を防止するためのトレーニングをリハビリテーションにて行いながら、スポーツ復帰を目指します。

膝の予防と要因

前十字靭帯損傷

前十字靭帯は大腿骨と脛骨(すねの骨)をつないでいる靭帯で脛骨の前方偏位(前への移動)と内旋(内側へのひねり)を制御する役割をしています。

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
サッカー、バスケットボール、バレーボール、スキー、柔道、ラグビー、野球などに多く発症し、急な方向転換や停止動作、ジャンプの着地や踏み切りで受傷しやすいです。
受傷肢位は膝軽度屈曲での外反位(つま先が外向きで膝が内へ入る状態)が多いとされています。女性に多い傾向にあり、その頻度は男性の2~3倍といわれています。
どのような痛みが生じるか
受傷時に膝くずれ(ガクッとなる、ずれる感じ)が起こり、時にポップ音(断裂音)を伴います。関節内に血液がたまることもあります。膝の痛みと腫脹は通常1週間から10日で改善しますが、膝不安定性の残存が問題となります。
どのような治療をするか
保存治療と手術治療に分けられます。
保存治療はリハビリテーションで主に筋力トレーニングや動作訓練、装具療法を行います。
しかし、前十字靭帯は周囲からの血流(栄養)が乏しく治癒しにくいことが分かっており、保存治療には限界があります。膝くずれ症状を放置することで2次損傷(半月板、軟骨損傷)を引き起こす危険があるため、症状が改善しない場合は手術を検討します。
手術治療は自分の膝屈筋腱を用いて靭帯を再建する方法で、当院では解剖学的2重束再建を行っています。
完治までのおおよその期間
最短で10~14日程度の入院が必要で手術翌日から松葉杖歩行、膝関節曲げ伸ばし訓練を開始します。術後約4週松葉杖歩行、3ヶ月からジョギングより開始し6~8ヶ月よりスポーツ復帰としておりますが、実際に受傷前の競技レベルまでには9~10ヶ月以上要することが多くなっております。

半月板損傷

半月板は大腿骨と脛骨の間にあるアルファベットのC型をした軟骨で内側と外側の対になって存在し荷重時クッション作用と膝関節の安定を担っています。

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
過度の衝撃やひねりで損傷しスポーツ全般でみられ、前十字靭帯損傷と同時に受傷する場合も多いです。先天的に半月板の大きい円板状半月の場合や中年以降の変性を伴った半月板では、軽微な外傷で発症することがあります。
どのような痛みが生じるか
関節裂隙(関節の隙間)の痛み、腫脹、引っかかり感などの症状がみられる。特に階段昇降時や膝を深く曲げる姿勢(あぐらや正座)で痛みが出ることが多い。断裂した半月板がはさまって膝の曲げ伸ばしができなくなるロッキング症状を呈す場合もあります。
どのような治療をするか
保存治療は、リハビリテーションやヒアルロン酸関節内注射を行うことで自然回復を促します。
半月板は辺縁の一部を除いて血流がなく修復しにくいため、症状の改善がない場合は手術を検討します。手術治療には半月板切除と半月板縫合があり、どちらも関節鏡を用いて行います。断裂した半月板部分のみ切除し、縫合可能な部分には縫合術を行います。現在はなるべく半月板を温存するよう心掛けております。
完治までのおおよその期間
半月板切除のほうが半月板縫合よりも後療法が早く、手術翌日より荷重歩行を許可し、1ヶ月からランニングを開始、2~3ヶ月でスポーツ復帰を目標とします。
縫合術は、切除より荷重を2週間遅らせる必要があり、スポーツ復帰までは4~5ヶ月となります。

離断性骨軟骨炎

離断性骨軟骨炎とは、関節軟骨の一部が壊死して骨と一緒にはがれる疾患です。
膝関節に最も多くみられ、大腿骨内側に85%、外側に15%、まれに膝蓋骨にみられます。

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
発症原因は不明な点も多く、はっきりしていませんが、ランニングやジャンプを繰り返し行うスポーツ選手に多くみられます。10代に多く、男女比は2:1と男性に多い傾向にあります。円板状半月を合併することも多いです。
どのような痛みが生じるか
初期はスポーツ中、もしくはスポーツ後の違和感や鈍痛のみで症状がはっきりしませんが、軟骨片がはがれてくると引っかかりやズレを訴えるようになり、時にロッキング(軟骨がはさまる)を起こします。
どのような治療をするか
成長期では保存加療が選択され、運動制限による経過観察を行います。レントゲンやMRIで修復が認められれば、スポーツを徐々に再開します。
成長期以降の治療遷延例では、針で骨に穴を数ヶ所あけて出血させることで軟骨再生を促すドリリングという方法を行います。また、軟骨片がはがれ遊離した場合には軟骨片を固定する方法や軟骨片の固定が困難な場合には自家骨軟骨柱を移植する方法(モザイク)が行われます。
完治までのおおよその期間
どの治療法もおおむね3ヶ月から6ヶ月でスポーツ復帰しておりますが、病期や経過によってはそれ以上長期化する場合もあります。

足首の予防と要因

足関節捻挫

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
主に足首を内側に捻ることで生じます。
内くるぶし:三角靭帯
外くるぶし:前脛腓靭帯、前距腓靭帯など
どのような痛みが生じるか
内くるぶし、外くるぶしの周囲が腫れ、痛みを生じます。
皮下に内出血を伴うこともあります。
どのような治療をするか
受傷直後は患部を挙上・冷却し安静を保ちます。
痛みが強い場合にはテーピングやバンド固定にて患部を保護します。
完治までのおおよその期間
損傷の程度により数日から数週間と様々です。
痛みが治まったら軽い運動からはじめ、徐々に活動量を高めていきます。
患部が安定するまでは再発予防にテーピング・バンド固定が有効です。

下腿三頭筋損傷

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
スポーツ前に十分な準備運動をせずに瞬発力を要する動作(スタートダッシュ、ジャンプなど)を行った際に痛めてしまいます。
どのような痛みが生じるか
受傷部位を伸ばしたり押したりすると痛みが生じます。
症状が強い場合には歩くことや立つことが出来なくなります。
どのような治療をするか
スポーツを制限し、患部の冷却を行い、安静を保持します。
症状が強い際にはシーネ固定や、松葉杖使用による荷重制限を行います。
完治までのおおよその期間
損傷の程度により数日から数週間と様々です。
痛みが治まったら軽い運動からはじめ、徐々に活動量を高めていきます。
復帰時期を誤ると再発の可能性があります。

第5中足骨疲労骨折

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
ランニングやジャンプ動作の繰り返しにより発症することが多い骨折です。
どのような痛みが生じるか
痛みの程度は様々です。赤みや腫れを伴わないこともあります。
レントゲンでは分からないこともあり、MRIで評価することもあります。
どのような治療をするか
保存療法:安静の保持、場合によっては荷重制限を行います。
手術療法:骨の癒合が得られない際には手術を行います。
また、確実な早期スポーツ復帰を希望する際には手術を検討します。
完治までのおおよその期間
1~2ヶ月で徐々に活動性を高めていきますが、骨癒合が不十分な場合には再骨折を起こすことがあります。3ヶ月でスポーツ復帰を目指します。

アキレス腱断裂

どのようなスポーツで起こりうる傷害か
スポーツ前に十分な準備運動をせずに瞬発力を要する動作(スタートダッシュ、ジャンプなど)を行った際に切れてしまいます。
どのような痛みが生じるか
『バットでふくらはぎをたたかれたような痛み』を生じます。
どのような治療をするか
保存療法:ギプスによる固定を行います。
手術療法:断裂部分を縫合しギプスによる固定を行います。
※どちらの治療法も再断裂の可能性があります。
完治までのおおよその期間
ギプス固定を4~6週間行い、徐々に荷重を開始します。
3ヶ月程度で軽い運動が可能になり、6ヶ月程度で活動レベルを高めていきます。
受傷前のスポーツレベルへの復帰時期は個々の症例で様々で、早くて半年縲怩P年程度です。